コラム風書評:ウェブ進化論−−本当の大変化はここから始まる

ここ数日,広島の片田舎でこの本をさまざまな人に紹介している。エスタブリッシュな方,若手の技術者,感度の高いWEB開発者,さまざまな人に紹介しているが,私がこの本をそういった方々に紹介している理由は,この本が1995年に出た村井純『インターネット』に相当する本だと感じているからだ。

1995年,インターネットがやっと目利きの人たちに認知され,Netscapeの登場,Windows95の登場により爆発的に広がって,10年たって,各家庭までFTTHで100Mbpsの回線が行き届いたのは皆さんもよくご存知な事だと思われる。
この本をいろんな人に紹介しているのは,この本が今後10年を予測する,いわば現代の村井純『インターネット』本であると思っているからである。Googleの隆盛,Ray Ozzieの手紙が示すMSの今後10年の方針大転換など,今年がいわばインターネットの夜明けである1995年に相当する時期であることを想像することは,この本を読んだ人ならそれほど難しくないだろう。

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正直,Web 2.0googleロングテールなど,私自身の仕事だと,自分が扱っているプロダクトであるiモード用のコンテンツさえ作っていれば,VodafoneAU用のコンテンツを変換してくれるモバイルゲートウェイエリクサー」くらい。

私がその程度なんですから,東京で,サイボウズやWEB系の開発企業に所属しているならいざ知らず,まだまだ「こちら側」を主な事業形態にしている多くの企業に所属している人,特に地方に住んでいる人には「WEB 2.0なにそれ?食べるとおいしい?」状態ではないかと思われる。
にもかかわらず,私が「ウェブ進化論」を人に薦めるのは,今後,さまざまな影響をわれわれに及ぼすであろう今後の大きな流れの潮流を見極めるための指針が示してあると思われるからだ。これは,会社として影響を受ける場合,あなた自身が新たな事業を考える場合,自分が扱うプロダクトがどう変遷していくか,自分のプライベートでより便利にインターネットをえる仕組みが出てくるのか,技術者として,どうスキルアップしていくのか,このような形で,今後,この数年間で劇的な変化が出てくると思われる。
例えば,私はセキュリティ製品を扱っているが,今,個人情報保護法特需,SOX法特需でそれほど苦労せずに売れるような状態になっている。しかしながら,今後,劇的な環境の変化で,もっと便利に使えるシンクライアントのようなものが出てくると,今まで売ってきて競争優位にあるセキュリティ製品が一気にマイナー製品になってしまうかもしれない。WEB2.0系の動きにより,このように発想の劇的な変化が起こって,自分と自分が手がけている本業へ将来的に多大な影響が出てくる可能性がある。そのような事象が発生した場合に,できるだけ感度を高く感じ,変化に対応していこうと思っいる。本書は,そういった感度を高くするための指針,最新のインターネット上で起きている技術動向,そして技術者として今後どうあるべきかの全てが書いてある。
良書には,一回読んで終わりの本と,数回読んで,そのつど新しい発見のある本がある。本書は,時間を置いて,何度も読み直して,さらに今後起こるであろう梅田さん周辺の議論も全て注力してみていくべきである。帯にある羽生さんの現在進行形の物語であるというのも納得である。
この本は,ここ数年で私が出合った本の中で,間違いなくトップ3に入る本である。まだこの本を買われていない人はぜひとも買われることのをお勧めする。梅田さんの本のなかで、インターネットの整備により情報収集の過程がものすごく高速になり、情報収集の高速道路が惹かれたという比喩がある。(原点は羽生さんの言葉のようですが)これは、有用な情報へのアプローチやサマリーへの到達が非常に簡単になり、インプットが非常に簡単になったということをあらわしていると思われる。そう、そこまでは誰でも簡単に到達で来るのだ。本書ではその先では大渋滞が起きており、大渋滞を抜け出すには、知の体系化からフロンティアを見つけ出して、その分野でさらに先に進むべしと、つなげている。
私はこれを先に進むべきはアウトプットを出すべきと追記させていただこうと思う。なぜなら、最近、高速道路がしかれてしまったことによって、情報収集があまりにも簡単になってしまい、集めたデータを知にまで高めるプロセスが簡略化されて、そのノウハウの貧弱な若者が多いと感じるからだ。アウトプットを出せば、あなたの読んだ知識はさらにあなたの血肉になる。どこから手をつけてみたらわからない人は、まずは、本書を読んで、あなたの感じたことを自分のblogに書いてみることからはじめてはどうかと思う。
さらに、「ウェブ進化論」以外に、何度も読み返すべき本として「考具」がある。この本の中で、気に入った言葉で神田昌典さんの言葉を引用させていただく。

「成功するためのノウハウはすでに明らかになっているのに、実際に行動を移す人は1%しかいない。だから成功するのは簡単だ」。

あなたは本書を読んで、行動する人ですか?それとも、わかった気になるだけですか?もちろん、私は行動する人でありたいと思います。では、皆さん、フロンティアの先で会いましょう。;-)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

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考具 ―考えるための道具、持っていますか?

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インターネット (岩波新書)

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