国家の罠
梅田氏(id:umedamochio)のページで知ったのですが、鈴木宗男事件で、外務省のラスプーチンと呼ばれた人物が書き下ろした衝撃のノンフィクション。正直、ここ数年で読んだ本の中で、文句なしのベスト3の中に入ると思います。
国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて 佐藤 優 (著) 価格: ¥1,680 (税込) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4104752010/joujisetsuzok-22/
ちなみに、鈴木宗男氏と著者の佐藤氏が逮捕されたのは国策捜査であると、著書の中で書かれていますが、以下に少しまとめます。
[内容の引用] > 国策捜査とは「時代のけじめ」をつけるためにひつようなものである > 時代を転換するために何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪する。 > > 検察が恣意的に適用基準を下げているのではない、一般国民の基準で適用基準を > 決める。感覚は一般国民の正義と同じでなくてはいけない。ある意味、ワイドショー > と週刊誌の論理で事件が生まれる。 > > 今まで問題ないものが、世間一般の周知のものとなり、検察が動かざる終えなく > なる。そのとき、逮捕のハードルが下がり、「時代のけじめ」として、象徴的な > 人物が逮捕されるわけである。 > > 国策捜査は冤罪ではない。これというターゲットを見つけ出して、揺さぶって引っ > 掛けていく。目立つ人はいろいろな意味で無理をしている。無理をすればひずみ > を生む。ひずみには引っ掛けられる隙が必ずある。 > > たとえ裁判で無罪になっても、警察にも面子があるから10年裁判になる。だから、 > 被告人は失うものが多いし、国策操作でつかまる人は頭がいいから、それを読み > 取って呑み込んでしまう。 > > 国策捜査のターゲットになり、検察に目をつけられるとあり地獄に落ちたありの > ように助からない。「あがり」はすべて地獄のすごろくである。 > > ただし、国策捜査の犠牲になった人に対する礼儀もある。 > 国策捜査の被害にあった人は、実刑にならず、執行猶予にならなければならない。 > 国策捜査の対象になる人は能力がある人なので、うまく人生の再出発ができるよ > うに配慮するのが特捜検事の腕なのだ。
何でこの本を手にとったかというと、officeさん事件について、少しでも警察側の考えがわかればと思って手に取ったのですが、予想以上の情報量でびっくりしました。さすが、外交官とはいえ、ソ連のクーデター時にCIAよりもはやくゴルバチョフ生存情報を入手した「情報」を生業とする「現役スパイ」による克明な記録です。これは一読の価値があります。
officeさん事件をご存じない方は以下をどうぞ。世間一般的にはACCS事件と言ったほうがよいかも。
ちせさんの officeさん事件関連 参照 http://sp.homelinux.com/seer/library.shtml 関連記事 「ACCS個人情報漏洩者 逮捕事件を私的に考える」 K氏(office氏)の不正アクセス禁止法違反・威力業務妨害の容疑での逮捕に関連して http://stakasaki.net/accs_sec/accs_sec.html ACCS不正アクセス 京大研究員逮捕事件のテンプレ http://www.geocities.jp/officeandaccs/index.html 検察官を翻弄しまくったoffice氏の奮闘 http://blog.goo.ne.jp/hwj-sasaki/e/cf7e7ee952cc871948b78f3a1206a6b4 office裁判傍聴記 第一回(SCAN 2004年5月) http://yellowdude.air-nifty.com/articles/2005/01/officescan_2004.html 不正アクセス禁止法をめぐる大論戦――office裁判(ASAHIパソコン 2004年11月) http://yellowdude.air-nifty.com/articles/2004/11/officeasahi2004.html 「不正アクセスとは何か」--office氏の判決を読み解く http://japan.cnet.com/news/sec/story/0,2000050480,20082116,00.htm
正直、この本は情報を専門にする著者が仕掛けた情報戦だと思います。だからこの本の中で書かれている善人「鈴木宗男」氏についても、だいたい×0.3くらいで見ないといけないと思いますが、そういう目で見ても興味深いです。マスコミにしてやられた著者が、今度はマスコミを使って自分の主張を周知に広げているわけですね。
officeさんについては、彼は政治家ではないですし、彼が事件で行った行動は、倫理的にみても、一般の人の感覚からしても、有罪相当だと思いますので、国策捜査そのままの状況であることはないと思いますが、逮捕までに至る「劇場型」の捜査など、非常に今の検察の捜査の仕組みについて理解するのに役立つと思います。
特に、まずは有罪ありきで、周りの事情聴取からストーリーを作っていくくだりなど、伝え聞こえてくる、関係者の話からも、非常に近いように感じました。
正直、こういう経緯と流れを見てしまうと、個人的には、officeさんには、例え、不本意でも有罪と認めて、自分なりの主張をまとめた本なりを出すなりして、新たな人生に出発したほうがよいと思いますが、まぁ、officeさんは基本的に戦う人なので、ライフワークのように、控訴を続けていくんでしょうね・・・
とりあえず、officeさん事件に興味がある人は買って損はないと思います。
お勧めです。
それから、この本の中で紹介されていた本が、以下です。情報戦に興味を持ったので、買ってみようと思います。
スパイのためのハンドブック ハヤカワ文庫 NF 79 ウォルフガング・ロッツ (著), 朝河 伸英 (翻訳) 価格: ¥567 (税込) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150500797/joujisetsuzok-22/