サイバー犯罪捜査入門−捜査応用編−

本書「サイバー犯罪捜査入門−捜査応用編−」知る人ぞ知る雑誌「捜査研究」で連載されていたハッカー検事こと大橋検事執筆の「検証・ハイテク犯罪の捜査」の連載から、「ソフトウェア捜査」「情報漏えい犯罪」および「企業関連犯罪」をまとめたものである。通常、捜査機関に所属している以外の人が本書を手にするのは、技術者の方がハイテク犯罪、サイバー犯罪とはなんぞやという疑問を解決するためと思われるが、技術者の方が本書を読むと、いろいろと首をかしげる箇所が多い。文系の方々にとって理解しやすいように解説されているため、技術的に厳密に言うとちょっと違うことが書いてある。それは、本書のターゲット層は、基本、文系の「検察官」や「ハイテク捜査官」、そして「警察官」で、彼らがハイテク捜査とは何ぞや、という学ぶことを目的ととしているためである。
「捜査研究」の連載をまとめたものなので、最新事例が平成17年のもので、事例集としてはちょっと古い。ただ、セキュリティ界隈の人にとっては既に懐かしい事件かもしれないが「ACCS不正アクセス事件」の詳細解説が掲載されている意味でも要注目。本書は事例集というよりは、事例を通じたハイテク捜査の在り方、捜査手法を理解するというテキストと言った使い方がよいようだ。
Librahack事件でも、警察、検察・弁護士含めての法曹界と、インターネット関係の技術者との間の認識・常識の相違を感じられた人が多いと思われるが、本書を読まれることで少しでもその隙間が埋まればと思う。
ちなみに、私はたまたま手に入れることができたが、初版はamazonに掲載されて、即、売り切れたようだ。現在、amazonでは在庫がないようだが、セブンネットショッピング楽天ブックスの方には在庫があるようだ。早めに欲しい人はそちらで頼まれるのがよいかもしれない。
なお、余談だが注釈が注釈になっていなくて、それが全部ほとんどコラムというかネタになっているのが、個人的には本書の最大の魅力だと思っている。なめるように注釈を読もう。お勧めである。